雑記 ー 2026 年 08 月
2026/08/30(Sun)多治見市の木造住宅|仕事場と住まいをつなぐ、下屋のある「明和の家」
設計実績
岐阜県多治見市に建つ「明和の家」は、ご夫婦それぞれが主に自宅で仕事をされる暮らしに合わせ、居住スペースと仕事スペースの両立を考えた木造住宅です。

今回の写真で注目したいのは、母屋と離れの作業場をつなぐ下屋と、杉板をまとった外観です。
仕事と暮らしを完全に切り離すのではなく、互いの気配をほどよく感じながら行き来できる構成としています。
母屋と作業場をつなぐ半屋外空間
母屋と離れの間には、屋根のある半屋外の作業スペースを設けました。

屋内に取り込むほどではない作業や、外で使用する道具の一時置きなど、住まいの外側にこうした余白があると、仕事の仕方にも柔軟性が生まれます。
屋根があることで天候の影響を受けにくく、玄関から作業場への移動もしやすくなります。仕事場と住まいの間に、内でも外でもない空間を挟むことが、両者を自然につなぐ役割を果たしています。
玄関まわりに奥行きをつくる下屋
深く張り出した玄関屋根は、雨を避けるためだけのものではありません。

柱や軒裏の木を見せることで、杉板張りの外壁と調和した落ち着きのある玄関まわりにしています。道路側から玄関扉が直接見えにくくなり、住まいへ入る前のワンクッションとしても機能します。
下屋が連続することで、玄関、半屋外の作業場、離れがばらばらにならず、一つの建物としてまとまりのある外観になりました。
杉板と金属外壁を組み合わせた外観
母屋の外壁には、押し縁を施した杉板を採用しています。杉板には、建主様ご自身でウッドロングエコを塗装されました。
時間の経過とともに表情が変化していく木の外壁は、周囲の植栽や景観にも少しずつなじんでいきます。
一方、離れの作業場には金属系の外壁を使用。用途の異なる建物を素材によってさりげなく区別しながら、屋根や下屋をつなぐことで全体の一体感を持たせています。
景観を生かす2階の居住スペース

敷地の東側に広がる眺望を生かすため、LDKは2階に配置しました。
写真からも、庭側に向かって大きく開く窓とバルコニーが確認できます。東側の景色を室内へ取り込みながら、南側の大きな窓から冬の日射を得られるよう計画しています。
仕事場を含む1階と、くつろぎの中心となる2階。上下階で役割を整理することで、自宅で仕事をしながらも生活に切り替えやすい構成となっています。
住まいと仕事場を一緒につくる場合、必要な部屋数だけではなく、行き来の仕方や音、視線、屋外とのつながりまで考えることが大切です。
有建築設計舎では、仕事の内容や一日の過ごし方、敷地の景観などを読み取り、それぞれの暮らしに合った住まい方をご提案しています。自宅兼仕事場や離れのある家を検討されている方も、ぜひご相談ください。
2026/08/23(Sun)民泊利用も見据えた、豪雪地帯で暖かく暮らす木の家
設計実績
こちらのお家は、個人住宅としての暮らしを基本にしながら、民泊としての利用も見据えて計画した木造住宅です。

周囲の自然に対して大きく開き、庭と室内を緩やかにつなぐ一方で、豪雪地帯という地域特有の気候にもきちんと向き合っています。
有建築設計舎が大切にしたのは、開放感のある住まいと、寒い季節にも快適に過ごせる室内環境を両立させることです。
豪雪地帯だからこそ、断熱をしっかり考えます
雪深い地域の住宅では、デザインや間取りと同じくらい、建物の断熱性能が重要です。
外が厳しい寒さになったとき、せっかく室内を暖めても、その熱が外へ逃げやすければ快適な環境を保ちにくくなります。
そこでこの住まいでは、建物全体の断熱をしっかりと計画しています。
さらに窓にはトリプルガラスを採用しました。
窓は室内と屋外をつなぎ、景色や光を取り込むために欠かせない存在です。その一方で、冬には熱が逃げる経路にもなります。
だからといって、寒い地域だから窓を小さくすればよいとは私は考えていません。
どこから光を取り入れるのか、どこから景色を楽しむのか、そして室内の暖かさをどう守るのか。それぞれを考えながら窓を計画することが大切です。

大きな開口とトリプルガラス
庭に面した部分には大きな開口を設けています。
室内から庭へ視線が抜け、建物の内と外が自然につながる構成です。軒下の空間を介して庭へつながることで、室内だけで暮らしが完結しない住まいを目指しました。
大きな窓を設けながら、ガラスにはトリプルガラスを採用しています。
開放感を求めて窓を大きくすることと、断熱性能を高めることは、どちらも快適な住まいをつくる上で大切です。
有建築設計舎では、デザインだけ、性能だけと切り分けるのではなく、両方をひとつの住まいとして考えています。
多治見・名古屋・岐阜で木造住宅を設計する場合にも、窓の大きさや位置、方角、軒との関係は重要です。地域の気候や敷地条件を読みながら考えることが、パッシブデザインの基本になります。
深い軒がつくる、室内と庭の間の居場所
外観を印象づけているのが、横方向へ大きく伸びる屋根と深い軒です。
軒をしっかりと出すことで、建物と庭の間にもうひとつの居場所が生まれます。
室内、軒下、庭と段階的につながることで、建物の輪郭だけでは語れない広がりを感じられる構成になります。
また、軒は外観を整えるためだけのものではありません。
太陽高度が高くなる季節には強い日差しを遮り、太陽高度が低くなる季節には光を取り入れるという考え方も、パッシブデザインでは重要です。
どの程度の軒を設けるのかは、建物の向きや窓の位置などを踏まえて検討する必要があります。
有建築設計舎は、こうした一つひとつの要素を意匠と性能の両面から考えています。

平屋のように伸びやかな外観
建物は水平方向への広がりを感じさせる構成としています。
低く伸びる屋根と軒、その下に連続する柱や開口部が、周囲の景観に対して穏やかな外観をつくっています。
木部の温かな表情と落ち着いた外壁、金属屋根を組み合わせることで、自然の中に馴染みながらも輪郭のはっきりとした住まいに仕上げました。
玄関側には縦格子を取り入れています。
大きな面として木を使う部分と、細かな格子として木を使う部分を組み合わせることで、同じ素材でも異なる表情をつくっています。
民泊利用も考えた住まいだからこそ
こちらのお家は、住まい手の日常生活だけでなく、民泊として利用することも想定しています。
民泊というと、宿泊する方のために特別な空間をつくることをイメージするかもしれません。
しかし有建築設計舎が大切にしたのは、まず住宅として心地よく暮らせることです。
住まい手が毎日快適に過ごせること。そのうえで、訪れる方にも自然や建築を楽しみながら心地よく滞在していただけることを考えています。
庭へつながる大きな開口や軒下の空間も、その心地よさをつくる要素のひとつです。
住宅と民泊をまったく別のものとして考えるのではなく、ひとつの建築として丁寧に整えることで、多様な使い方を受け止められる住まいになります。
地域の気候を読むことから始める家づくり
家づくりでは、断熱性能を示す数値や設備の性能も大切です。
しかし私は、それだけで快適な住宅が完成するとは考えていません。
太陽がどこから入るのか、軒でどのように日射を調整するのか、窓をどこに設けるのか。そして、その地域では夏と冬にどのような気候になるのか。
建物単体ではなく、敷地と地域の環境まで含めて考えることが大切です。
豪雪地帯には豪雪地帯に適した設計があり、多治見・名古屋・岐阜にも、それぞれの敷地や気候に合わせた設計があります。
有建築設計舎は、パッシブデザインを基本に、住まい手の暮らしと土地の条件をひとつずつ読み解きながら木造住宅を設計しています。
自然に対して開いた気持ちのよい住まいでありながら、寒い季節には室内の暖かさをしっかり守ること。
性能を理由にデザインを諦めるのでも、デザインを優先して快適性を犠牲にするのでもありません。
その土地だからこそできる心地よさを見つけ、建築として形にすることを大切にしています。
2026/08/17(Mon)築130年の古民家に、廃材を活かした大きなテーブルを
設計実績
こちらのお家は、築130年の古民家をフルリノベーションした住まいです。

長い年月を重ねてきた建物を現代の暮らしに合わせて再構成する中で、有建築設計舎が大切にしたのは、古いものをすべて新しく置き換えるのではなく、建物が持つ素材や空間の魅力を次の暮らしへつなぐことです。
その考え方が、LDKの中央に配置した大きなテーブルにも表れています。
このテーブルには、リノベーション工事で撤去した廃材を活用しています。
古民家を改修すると、間取りの変更や既存部分の撤去によって、さまざまな材料が発生します。
そこで、役目を終えた素材をそのまま廃棄するのではなく、新しい家具として再び住まいの中へ取り入れました。
建物から取り出された素材が、今度は食卓を囲むための家具になる。
古い建物が積み重ねてきた時間を、家具という新しい形で暮らしへつなげています。
暮らしに合わせて大きさを変えるテーブル

このテーブルには、もう一つ大きな特徴があります。
一つの大きなテーブルとして固定するのではなく、2段階で使える構成としています。
普段の暮らしでは必要な大きさで使い、人が集まるときには天板を広げて、より多くの人数に対応できます。
家族で食事をする日と、大人数が集まる日では、必要な家具の大きさも変わります。
だからこそ、家具そのものに可変性を持たせるという考え方があります。
常に大きなテーブルを置いておくのではなく、必要なときに広げられる。
限られた住空間を効率よく使いながら、暮らしの変化にも対応できる家具です。
空間の中心にテーブルを置く意味
テーブルをLDKの中央に配置することで、家具そのものが暮らしの中心になります。
食事をする場所としてだけではなく、家族が集まり、会話を交わし、さまざまな時間を共有する場所です。
キッチンとの距離も近く、ダイニングからはリビングや和室、薪ストーブのある空間へ視線が広がります。
空間を細かく区切るのではなく、それぞれの場所がゆるやかにつながる構成です。
古民家ならではの太い梁や柱が空間の骨格をつくり、床や家具の木の質感がその雰囲気を引き継いでいます。
新しくつくった部分だけを目立たせるのではなく、既存の建物と新しい暮らしが自然につながるように考えています。
古民家の素材を「残す」だけではないリノベーション
古民家リノベーションでは、既存の柱や梁、建具などを残すことが注目されがちです。
しかし、有建築設計舎では「残すこと」だけが答えだとは考えていません。
その素材を別の場所で使えるのであれば、家具や内装など、新しい役割を与えることも選択肢になります。
今回のテーブルも、その一つです。
建物から撤去した廃材を新しい家具として活用することで、素材を捨てるのではなく、別の形で次の暮らしへ引き継いでいます。
古いものを古いまま残すのではなく、今の暮らしに必要な形へ変えていく。
それも古民家リノベーションの面白さだと私は考えています。

間取りと家具を一緒に考える
住まいの設計では、間取りを決めてから家具を置くという考え方だけではなく、家具まで含めて空間を考えることも重要です。
どこで食事をするのか。
何人で使うのか。
人が集まったときに、どの程度の広さが必要なのか。
キッチンからどのように動くのか。
こうした日常の動きを考えながら家具の位置や大きさを決めることで、空間の使いやすさは変わります。
特に古民家のように、既存の柱や梁、建具などを活かしながら間取りを再構成する場合、家具と建物の関係まで含めた設計が大切です。
多治見・愛知・岐阜で古民家リノベーションや木造住宅の改修を検討する場合も、間取りだけでなく、家具や暮らし方まで含めて考えることで、その住まいに合った答えを見つけやすくなります。
また、古民家の改修では、素材の魅力だけでなく、光や風、日射などの環境も考慮する必要があります。
有建築設計舎が得意とするパッシブデザインの考え方を取り入れながら、既存建物の魅力を活かし、現代の暮らしに必要な快適性を考えていきます。
築130年という時間を重ねた建物に、新しい暮らしをつくる。
そして、撤去された廃材にも新しい役割を与える。
この住まいでは、建物だけでなく、素材そのものの時間まで次の暮らしへつないでいます。
有建築設計舎は、古民家が持つ魅力を活かしながら、住まい手の暮らしに合わせて空間を再構成する設計を大切にしています。
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