コンセプトと性能
コンセプト
最適な家
私たちの価値観は十人十色で家への思いも十人十色。家を建てる敷地の条件も、形状・隣地の環境・光環境・通風・地盤・見晴らしなど、ひとつとして同じ敷地はありません。だから、本来、家が持つべき機能や形や家に求められるものも一つとして同じものはないのです。
有建築設計舎では住まい手とお話をさせていただき思いを共有すること、敷地の情報を現地周辺環境の調査や役所や様々な資料から把握することで、住まい手とその土地に最適な家を設計します。
住まい手が求められる家と有建築設計舎が設計する家が合わないこともあります。その場合には、家づくりの簡単なアドバイスをいたします。住まい手にとって一番不幸なのは、価値観の合わない作り手と家づくりを行い、そこで住んでいく事だと思います。
地域の木材と自然素材
家はとてもたくさんの材料・部材が組み合わさって出来ています。それらの材料・部材の機能や性能とその組み合わせ方が、家全体の性能となります。使う材料を決める時は、必要な性能やコスト、形状・寸法などの条件はありますが、選択肢はひとつではありません。
有建築設計舎では構造材に地域の木材を使いその他にも適材適所を基本に出来るだけ自然素材を使った家づくりの設計を行います。 自然素材は製造時や廃棄時の環境負荷が小さく、特に地域の木材利用は木材輸送時の環境負荷を抑え、さらには森林の持つ水源涵養などの公益的機能保全や地域産業などのへ貢献に繋がります。
何より自然素材の長所短所を理解し組み合わせることで安心できる住環境をつくることが地域に根差した本来の家づくりだと考えているからです。
また、無垢の木や石や漆喰、珪藻土などの自然素材は、ちょっと手を掛け愛着を持って付き合っていくことで時の経過とともに味わい深い変化を見せ、それが住まい手と家の歴史になります。
もちろん、お手入れなどのご相談にもお応えします。
シンプル
家族の構成や生活スタイルは一生の内で様々に変化していきます。
家を建てる時に作り込み過ぎて、数十年の長い目で見た時に結局少ししか使わない飾りや物置になってしまうスペースを作り込み過ぎるのは勿体ないと思います。家族や生活の変化に合わせて上手に住み続けていただく為には、余分なものを極力無くし、住まい手に合った必要なもの必要な空間をシンプルに計画することが大切だと考えています。また、構造や耐久性も仕組みや造りがシンプルであるほど家のために良くなります。
何事も難しく複雑にすることは簡単で、シンプルにするのはとても大変ですが、それが家づくりにも大切だと思います。必要なものを必要な時に必要なだけ。
省エネルギー
地球温暖化が進み各分野で省エネルギーや温室効果ガス排出量の削減に取り組まれている中で、住宅でのエネルギー消費量は増えているのが現状です。また、残念ながらイメージだけのエコが先行していたり、設計において省エネ性能を明確に計画したり、建てられた家の省エネ実態の検証が行われるところまで、まだ住宅分野全体では至っていません。その様な状況で住まい手が本当の省エネ性を判断し選択するのは難しいと思います。
有建築設計舎は、一般では理解・判断しづらい住宅の省エネ性能を数値で定量的に把握し計画して、実際の住宅として実現させていくことがプロとしての設計だと考えています。
住宅の断熱性能の計算、敷地に応じた通風や自然採光や日射調整の計画などにより省エネ性能を計算して設計します。また、「省エネ×快適な暮らし」をしていただく為に、それぞれの家にあった住まい方のお手伝いもいたします。
長寿命
現在の日本の住宅の平均寿命は約30年と、欧米の耐久年数100年と比べても非常に短くなっています。家を建てるには大きなコストがかかり、住まい手の生活が刻まれた家が短い寿命で壊されることは、家づくりに携わる者としてとても残念なことです。
家の寿命はハード面とソフト面の2つの要因で決まります。ハード面はメンテナンス不備による老朽化や地震の被害などで安全に使用できなくなる場合、ソフト面は住まい手の環境や引越しなどで次に住む人が見つからない場合などです。
有建築設計舎はメンテナンスフリーの家は無いと考えます。長寿命な家を考えるとき、特に普段見えない部分(壁の中や床下など)で発生の可能性がある問題(内部結露やシロアリ)の予防と点検や対処などメンテナンスが出来る設計を心掛けています。それは、建物よりも先に寿命をむかえる設備機器などの交換を考えても大切なことです。
永く残る建物としての設計を行い、家が建ってからはその家に愛着を持って永く住んでいただく為のお手伝いを惜しみません。
有建築設計舎の性能基準
安心・安全
耐久性
建物の寿命に直結する構造躯体の劣化対策には、白蟻と木材腐朽菌への対策があります。いずれも耐震性など構造の安全性を担保する構造躯体の健全性に大きく影響します。有建築設計舎では耐久性の確保を次のように行います。
白蟻対策は、
化学的対策に頼らず物理的対策を基本とする。
- 侵入経路となるリスクの高い箇所は目視で
点検・対応できるつくり - 地面からの基礎の高さを42cm確保
- 防湿フィルム+防湿コンクリート層15cmのベタ基礎
壁内や天井内の木材腐朽対策は、
計算により確認した壁や天井の部材構成を基本とする。
- 定常結露計算による壁内や天井内の結露のリスク確認
- 屋根・外壁通気工法による速やかな湿気排出
- 二重の防水層による雨水侵入対策
その他に、土台・柱には耐久性の高いD1特定樹種を使用する。また、白蟻侵入や結露のリスクは暮らし方も重要な要素となるため、実際の暮らしに対応したアドバイスも行います。
耐震性
世の中の大多数の戸建て住宅が、耐震性の確認において精密な構造計算を行わず、壁量計算という簡易計算によって建てられています。しかし、あまり知られていませんが壁量計算には想定している前提条件があり、壁量計算をクリアしても構造計算を行うと耐震性が不足している場合もあります。有建築設計舎では構造の安全性を次のように確保します。
- 構造計算の許容応力度計算により構造安全性を確認
- 耐震等級3の確保(建築基準法で想定する1.5倍の地震力に対抗)
快適
住空間を一定の温熱環境に保つには様々な方法が考えられます。建物性能が低くてもオフィス空間のように設備に頼って常に暖冷房で室温を強制的に維持することも可能ですが、それでは体感温度などが快適とは言えない環境になります。また沢山のエネルギーを消費し、膨大な光熱費を必要とする住宅になります。
有建築設計舎では、パッシブデザインの考え方を基本にして、まず建物のあり方(デザイン・性能)で外部温度と人の快適温度のギャップを埋めることにより、年間を通してできるだけ暖冷房設備に頼らずに過ごせる期間を長くします。その上で、暖冷房が必要となる期間は、できるだけエネルギー消費を抑えつつ室温を確保できるように、性能設計を行います。
具体的には次の年間暖冷房負荷と室温の実現を目標としています。
- 年間暖冷房負荷180MJ/㎡
- 冬期室温LDKで明け方の最低自然室温(非暖房時)が15℃を下回らない
非居室で最低自然室温が10℃を下回らない - 夏期室温30℃以上とならない
※暖冷房負荷とは:室内を快適な温湿度に保つために必要な供給熱量と除去熱量の合計値
目標室温を冬は下限値、夏は上限値としているのは、最も気温の下がる1月中旬の6時頃と、最も気温の上がる8月中旬の14時頃にこれらの目標温度をクリアできれば、多くの生活時間帯で暖冷房を使わなくても快適な温度環境を保つことができ、暖冷房を使う時でも少ないエネルギー(光熱費)で済むからです。
これらの目標を達成するために必要な建物の性能値として、有建築設計舎では性能基準値を次のように設定しています。
(建築物省エネ法地域区分6の場合)
断熱性能(冬の保温性能)
- 実質的な外皮平均熱貫流率(UA値):
0.46W/㎡K以下 - 実質的な熱損失係数(Q値):
1.6 W/㎡K以下
日射熱取得性能(冬の太陽熱利用暖房性能)
- 暖房期外皮平均日射熱取得率(ηAH値):
2.0以上を目指す(敷地や周辺環境、外皮性能により調整します)
日射遮蔽性能(夏の室温上昇抑制性能)
- 冷房期外皮平均日射熱取得率(ηAC値):
1.0以下を目指す(一定程度効果のある窓の付属部材も評価します)
社会的責任
住宅は住まい手の資産であると同時に社会的な側面もあると考えています。何故なら住宅は、建設時・使用時・解体時において常に地域社会や地球環境に対して様々な影響を与えているからです。そして、その住宅が建設から解体までの長い期間で地域社会や地球環境とどのように関わるのかについては、設計者のスタンスによるところが大きいと思います。
有建築設計舎は、SDGs(持続可能な開発目標)17の目標の内
- ⑪住み続けられるまちづくりを
- ⑫つくる責任つかう責任
- ⑬気候変動に具体的な対策を
- ⑮陸の豊かさを守ろう
の4つのゴールに向かうための次の基準で家づくりを行います。
省エネ性能
- 省エネルギー対策等級5、認定低炭素住宅基準以上の省エネルギー性能
- 太陽光発電システムを設置する住宅は、ZEH(ネットゼロエネルギー住宅)認定基準以上
- 標準家庭の1/2のエネルギー消費で暮らす1985家族達成を目指す
- 実際の暮らしに対応した省エネルギーに繋がるアドバイスを実施
地域木材と自然素材の活用
- 建設地の近隣地域及び国内の森林で生産された木材を使用
- 適材適所で製造時・廃棄時の環境負荷が少ない自然素材を使用
長寿命化対策
前述の耐久性、耐震性に加えて
- 維持管理対策等級3
- 劣化対策等級3+床下空間37cm以上確保
- シンプルな構造計画による可変性の確保
長期優良住宅への対応
有建築設計舎の性能設計基準は長期優良住宅の基準を満たしています。
なお、長期優良住宅認定及び低炭素住宅認定の取得には設計監理料の他に別途申請費用が必要となります。