インタビュー
「家づくりへの思い」
有建築設計舎
一級建築士
坂﨑 有祐
家の思い出
私の生家は、築100年以上の古い家でした。夏は暑く、冬は寒い。おまけにプライバシーもありません。でも、その頃から木のぬくもりや魅力に気づいていたのだと思います。
大学では建築学を専攻しましたが、授業で扱うのは鉄筋コンクリート造や鉄骨造の大型建築物ばかり。なにか違うと思っていました。卒業後は建築関係の企業に就職しましたが、いつも木造建築が気になっていました。
そんなある日、「岐阜県立森林文化アカデミー」という学校を知り、迷わず入学。ここで、より専門的な木造建築の設計に加え、木や山そのもの、環境、林業まで幅広く学びました。その中で、日本で住宅をつくる場合、日本で古くから培われた木造建築の技術と、地域の山の木材を活用することが最も理にかなっていると知り、理想の住宅・理想の住まいをつくるために設計事務所を開設しました。
自然素材の良さとは
自然素材の良さとは
素材としての木の良さとは、肌ざわりの良さや耐久性に優れているだけでなく、お部屋の湿度を調整したり、ストレスの軽減に効果的など、数えあげれば切りがありません。
私は、木の1番の良さとは自然素材であることだと思います。工業製品が経年劣化で古ぼけていくのに対し、自然素材は、適切に使い続けることで歳を重ねるごとに風合いが美しく変化します。いわゆる経年美化です。日本には、そんな木が豊富に存在し、私たちは知らないうちに木から大きな恩恵を受けています。しかも木は計画的に伐採して使用しないと、里山が荒れて保水能力を失い、災害を起こす可能性だってあります。私たち日本人は長い時間をかけて、そんな優しくて、強い木を活かす技術と文化を育ててきました。
私が地元の木材を使う家づくりをご提案するのは、そんな理由からです。
思いを理解することから
私の理想は、すべてのご家族が安心して、快適に、そして幸せに暮らせる家。でも、お客様よって立地条件や年齢、家族構成は違いますし、どんな生活をしたいかも人それぞれです。
ですから、お客様とは何度も打ち合わせをさせていただきます。そしてお客様の思いをしっかりとお聞きし、理解し、整理した上で、デザイン・価格・機能のバランスがとれた、お客様に最適な住まいを提案させていただきます。
お客様が希望される暮らし方や憧れの空間など、どんなことでも結構ですので、私にお気軽にご相談ください。自由設計で家をつくる喜びを味わっていただけるよう、私がお手伝いいたします。
思い出の詰まった家
私はいつも、お客様に「よろしければ実際の家づくりに参加しませんか?」とご提案します。たとえば壁や床の塗装などの作業に、ご家族で楽しみながら参加してほしいのです。「この床はみんなで塗った」という思い出は、ずっとご家族の心に残ります。多少の塗りムラがあっても、時間が経てば思い出になります。
家を大切にする心は、物や人を大切にする気持ちを生み、その先にある地域や社会を想う豊かな心を育むのだと思います。いつかお子さんが成長されたとき、そのまたお子さんに「この床や壁は、おじいちゃんやおばあちゃんと、みんなで塗ったんだよ」と笑顔で話せるような、家族一人ひとりの家への愛着がずっと受け継がれていく住まいにしたいのです。家づくりは一生に何度もない大イベントです。ご家族の楽しい思い出がいっぱい詰まった家づくりのお手伝いをさせてください。
建てた後も末永くおつきあい
私は、お客様との関係は家が完成したら終わりではなく、むしろ完成した後が大切だと思っています。なぜなら、家を建てる時間よりも、その家で暮らす時間の方が長いから。
建築士としての私の仕事は、その長い時間の中で、お客様が安心して、快適に、幸せに暮らすお手伝いをすることだと思います。ですから定期点検やメインテナンスのご提案は当たり前。これまで私が設計させていただいたお客様は、困ったことがあると今でも私に電話をかけてこられます。雨どいになにかが詰まってしまった。お手入れの仕方を教えてほしい。そろそろ床を塗り直したい……。
その都度、私がお客様のお住まいの主治医として、困りごとの解決をサポートします。お客様の暮らしに寄り添い、困ったときにサポートできることは私の小さな喜びです。
私のこだわり
私は、お客様から「こだわりが強いですね」と言われることがあります。でも、私は独りよがりのこだわりを求めているのではありません。私はただ、お客様が安心して、快適に、幸せに、そして長く暮らしていただける住まいづくりのために、より良い選択肢を探し続けているだけのような気がします。
私には、住まいに関する原風景があります。最初に申し上げた私の生家で、私たち家族は祖父母と同居していました。祖母は晩年、大切に手入れをしてきた庭と、家族が見える部屋のベッドで毎日を過ごしていました。ある日、祖母はその部屋で静かに息を引き取りました。その日のことは、今でも当時の家の様子とともにはっきりと覚えています。きっと、祖母は住み慣れたその場所で最期を迎えられて幸せだったと思います。
私が常に目指しているのは、どんな流行のデザインより、どんな最新の設備より、家族がずっと暮らし続けたいと思える住まいであること。私にこだわりがあるとすれば、多分その一点だけではないかと思います。
これからも、お客様と良い関係を築いていけると心から嬉しく思います。